防食工事の必要性

防食工事とは

防食(防蝕)工事とは、金属やコンクリートを腐食から守るために行う工事です。
鉄筋コンクリート構造物は50年以上の耐用年数を期待されていますが、下水道施設(ポンプ場や終末処理場など)では、
排水処理施設から生成する硫酸化水素が原因でコンクリートが腐食劣化してしまう大きな問題が生じています。
コンクリートを腐食から守るため、ライニング材(防食材)によって硫酸化水素を遮断する層を作りコンクリートを保護することが必要です。
放置してしまうとケガや事故につながる恐れや、機械の寿命を縮めてしまうことも考えられるため適切な対応が求められます。

メンテナンスをしないで放置するリスク

コンクリート腐食が進みコンクリートの強度が低下し、思わぬ事故に。

コンクリートを硫酸化水素から遮断するライニング材(防食材)がなくなってしまうとじわじわと腐食は進んでいきます。メンテナンスを怠り長年放置してしまうと本来はコンクリートの内部にある鉄筋が露出し溶けてしまうことも。
コンクリートが落ち、鉄筋が溶ける段階では終末処理場の耐震強度にも問題を及ぼす恐れがあるため大変危険です。事故が起きてから後悔するよりも適切なメンテナンスで事故を未然に防ぐことが重要です。

コンクリートの剥落が原因で機械が故障。

防食ライニング工事を怠ると腐食が進んだコンクリートが落下し、終末処理場で稼働する機械の故障原因になってしまうケースがあります。
コンクリート片が落下する衝撃やコンクリート片の堆積による故障など、実際の耐用年数よりも短い期間で入れ替える必要が出てきてしまい、終末処理場の稼働に悪影響を及ぼす恐れがあります。またコスト面でも予期せぬ出費となってしまうでしょう。

長年放置したために大規模な工事が必要になり修繕コストが増加。

定期的なメンテナンスを怠ってしまうと予期せぬ危険やトラブルの原因となります。
場合によっては人命にかかわる大きな事故につながる可能性もあり、大変危険です。
当然ながら、時間の経過とともにコンクリートの腐食は進行していきます。本来ならば軽度の修繕で済んだものが、長年放置してしまったために大規模な修繕が必要な状況へと変わってしまいます。コスト面でも大きく膨らんでしまうことにならないよう、一見大丈夫に見えたとしても放置せず、プロの目による定期的な調査を行い、こまめにメンテナンスすることをお勧めします。

コンクリート腐食のメカニズム

  1. 密閉された施設内が酸素不足状態になる。
  2. 下水中の硫酸塩が硫酸塩還元細菌により硫化水素になる。
  3. 硫化水素が空気中で濃縮されてコンクリートの表面に付着する。
  4. 硫化水素は硫黄酸化細菌により酸化され、硫酸になる。
  5. 硫酸は壁面で更に濃縮され、コンクリート中の水酸化カルシウムと反応し、硫酸カルシウムになる。
  6. 硫酸カルシウムがエトリンガイトになるとき、膨張してコンクリートが腐食崩壊する。

下水道施設におけるコンクリート腐食が生じやすい箇所